ラノベ雑記録2004

ライトノベルに限らず書籍や映画等の感想と覚え書きです。

「RPG幻想事典」 早川浩

 1980年代半ば、コンピュータRPG『ウィザードリィ』や『ウルティマ』が日本に輸入され始め、国産の『ブラックオニキス』が大ヒットした時代。そのベースになった『D&D』や『ルーンクエスト』といったボートRPG(当時は「テーブルトークRPG」なんて言わなかった)があまり知られていないし、そもそも大前提のトールキンの『指輪物語』とか西欧の神話伝承の知識が不足しているからゴブリンとかオークとか言われても日本人にはわかんないよね!?……というところから、RPGに登場する武器や装備やモンスターについて紹介するコラムが雑誌『Beep』に掲載されていましたが、それに加筆改訂した上にオリジナルのボードRPGシステム『アルビオン』を収録したものです。
 ボードゲームとしてのRPGとコンピュータRPGが混在し始めた黎明期のゲーマーにとってのバイブルというべきファンタジーガイド。今でこそファンタジーや神話のガイドブックになる本は山ほど出ていますが、当時は歴史や文学の専門書以外には何もなく、ゲームのマニュアルやルールブック以外では85年創刊の『Beep』掲載の「RPG幻想事典」が重要な情報源だったのです。
 この連載が書籍化されたのが86年12月。そのちょい前に、安田均とグループSNEによる『モンスター・コレクション』が富士見ドラゴンブックから刊行され、この2冊にボルヘスの『幻獣辞典』が必携となります。そのあとに新紀元社が続き、怪兵隊が『RPGワールドガイド』を88年3月に刊行。コレクションもワールドガイドも、以後がんがん続編を刊行して現在に至りますが、この『RPG幻想事典』はファンタジーの基礎なるゲーム・神話伝説・文学、迷路の歩き方、ゲームに登場するドワーフやノームといった種族、魔法やアイテム、武器・防具、モンスターといったものを、豊富なカットやイラストと共に1冊で紹介してしまったところに価値があるのです。まさに黎明期の入門書です。
 宇宙軍、SFセントラル・アートやハレージング・ストーリーズ、千葉大SF研などに謝辞が捧げられているのも注目点です。

【RPG幻想事典】【早川浩】【Nikov.】【日本ソフトバンク出版事業部】