ラノベ雑記録2004

ライトノベルに限らず書籍や映画等の感想と覚え書きです。

「ヘルたん」 愛川晶

『家族が誰もいないからこそ、私たちにとって、理想の介護ができる可能性がある』

 神原淳は引きこもりだったが、借金まみれだった両親が行方不明となり、もう20歳を過ぎたともなれば遠い親戚の家に居候もしづらい。
 なんとか、かすかなツテをたどって浅草で一人暮らしをする成瀬老人の居候となるが、そこで出会ったヘルパーは、淳が高校時代に憧れていた不良先輩の中本葉月。
 伝説の名探偵だったという成瀬の家の離れに住みつき、ホームヘルパーの資格も取ろうと勉強を始める淳に、葉月は探偵事務所も始めればいいのよと気軽に言う。ヘルパーで私立探偵だから「ヘルたん」ね、と。

 神田紅梅亭寄席物帳の愛川晶の新作。
 ちゃんと連作ミステリになっているのだけれど、ストーリー的にはいろいろ語られなかった部分があれこれあって、続編の伏線になるのかなと今から期待。高齢者介護の現場の話が、うまいことミステリになっていますが、要介護者にして往年の名探偵である成瀬氏(あたかもクリスタルシンガーのよう)の言動が大きな鍵となり、最後まで読者の関心を引きつけて放しません。
 今や一般文芸の棚も、作家といい表紙デザインといい、判型が大きいだけでライトノベル棚と変わらなくなりつつあります。とはいえ、性とか愛憎にはせきららで、内容的にはけっこうビターテイスト。ラノベとして出したら1つ1つ明かされていく真実が重いです。
 みんな幸せになれると良いね。

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