ラノベ雑記録2004

ライトノベルに限らず書籍や映画等の感想と覚え書きです。

「マリア様がみてる/レイニーブルー」 今野緒雪 10

「人間関係に正解なんてないわよ。もしかしたらどこかに模範解答はあるかもしれないけれど、丸写しじゃつまらなくない?」
 武島蔦子さんの言葉。
 この作品に登場する「大人の視点を持つ少女」はどうして「オヤジくさい」キャラになるのだろう? 集団における自分のポジションが確立していて、かつそれを認識しているから多少周囲と違っていても気にしないということなんだろうけれど、それにしても趣味に走りすぎです。あるいは、ヘンなキャラでも大人だから、集団の中に居場所を見つけられるということなんだろうか。

 梅雨の季節。それぞれに問題を抱え、山百合会の2年生、祐巳志摩子由乃の3人の心は空模様のようにどんよりしていた。そして、ついに祐巳と祥子のすれ違いが決定的なものとなり……。
 
 メインキャラの転機となる巻ですね。乃梨子との姉妹問題を抱えた志摩子の心の動きを描いた『ロザリオの滴』、心臓手術を終えてやっと半年の由乃が剣道部へ入部するというのを反対する令の『黄薔薇注意報』、そして不可解な祥子の言動に祐巳が不信感を抱き始め、ついにすれ違いが決定的になる『レイニーブルー』の3作。
 前巻で「悩め悩め。たいしたことじゃないことで悩めるのが、若さの特権」と薫子さんが笑ったけれど、これも基本的にはその手の話。それぞれの立ち位置の違いからお互いを思う気持ちが空回りし、長い間にもつれてしまったのを、腹の中を全部ぶちまけてしまうことでリセットする必要があったのです。これはそういう巻ですね。真面目な少女たちが試行錯誤しながら親しい人たちとの関係を模索する話。
 『レイニーブルー』だけは1冊で収まりきらずに次巻へと続いてしまいましたが、これは福沢祐巳という、これまで着実にバージョンアップして成長していた少女が、ついにグレードアップするための通過儀礼の話なので仕方がありません。

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